k人のじゃんけんで、n回目に初めて決着が着く確率

バイト先で授業中にふと思いつき、授業そっちのけで考え出してしまった問題。

k人でじゃんけんをしたとき、結果があいこであったらもう一度じゃんけんを繰り返す。
n回じゃんけんを繰り返したとき初めて決着する(結果があいこでない)確率p(n;k)を求めよ。
また、初めて決着するまでにかかるじゃんけんの回数の期待値E(k)を求めよ。

よくある問題な気もするのだが、俺は考えたことがなかった。
初見の方は是非考えて見てください。


以下faryad君と俺でつつきまわした挙句の解答だったり、その数値シミュレーションだったり。
k人でじゃんけんを1回したとき、その結果があいこでない確率を
p_{dec}(k)
と書くことにする。このとき、結果がn回目で初めてあいこでなくなる確率は
p(n;k) = (1-p_{dec}(k))^{n-1} * p_{dec}(k)
である。よって以下で
p_{dec}(k)
を求めればよい。
k人の手の出し方の総数は3^k通りである。
決着する手の出し方は、k人全員が(グー,チョキ,パー)のうち二種類の手を選ぶ選び方である。ただしk人全員が同じ出し方をするものは除く。
(グー,チョキ,パー)から二つを選ぶ選び方は3C2通り、選んだ二つをk人全員が出す出し方は2^k通り、k人全員が同じ手を選ぶ選び方は2通りであるから、
p_{dec}(k) = \frac{ _3 C_2 * (2^k - 2)  }{3^k} = \frac{2^k - 2}{3^{k-1}}
である。あとはこれを代入すればよい。
Maxima先生による計算によると
p(n;k) = \frac{\left(1-\left(2^{k}-2\right)/3^{k-1}\right)^{n-1}\left( 2^{k}-2\right)}{3^{k-1}}
となるそうな。


次。ここから研究そっちのけで研究室で考えてたところ。
じゃんけんに参加する人数を決めたら、初めて勝負が着くのに何回くらいかかるのか、という情報を知りたい。
当然計算するべきは
E(k) = \sum_{n=1}^\infty n * p(n;k) = \sum_{n=1}^\infty\frac{n\left(1-\left(2^{k}-2\right)/3^{k-1}\right)^{n-1}\left( 2^{k}-2\right)}{3^{k-1}}
である。
こんなの計算できるわけない、と思って諦めていたのだが、この問題をちょいとつぶやいてたら先輩が反応。真面目に考えて下さった。
要は
p(n;k) = (1-p_{dec}(k))^{n-1} * p_{dec}(k)
であるから、
E(k) = \sum_{n=1}^\infty n * (1-p_{dec}(k))^{n-1} * p_{dec}(k) = \frac{p_{dec}(k)}{1-p_{dec}(k)} \sum_{n=1}^\infty n * (1-p_{dec}(k))^{n}
が求まれば良い。これってぶっちゃけ
\sum_{n=1}^\infty n*\alpha^n \quad (| \alpha |< 1 )
が計算できればいい。しかしよくよく見ると、高校時代によく使った例のあのテクニックで
S_N = 1*\alpha + 2*\alpha^2 + \cdots + N*\alpha^N \\ \alpha S_N = 1*\alpha^2 + \cdots + N*\alpha^{N+1} \\ (1-\alpha)S_N = \frac{\alpha}{1-\alpha}(1-N\alpha^N) \\ \lim_{N\rightarrow\infty} S_N = \frac{\alpha}{(1-\alpha)^2}
と分かる。
これを使って期待値を計算すると、なんと
E(k) = \sum_{n=1}^\infty n * (1-p_{dec}(k))^{n-1} * p_{dec}(k) =\cdots = \frac{1}{p_{dec}(k)}
となるのだ!!
あまりの綺麗な結果に、一緒に解いてもらっていた先輩と思わず感動のハイタッチ。

というわけで、期待値の解答は
E(k) = \frac{1}{p_{dec}(k)} = \frac{3^{k-1}}{2^k - 2}
となる。


↓証明というわけではないが、

  1. discrete:解析的に解けないと思い込んだ俺が離散的にmaximaに計算させた遺物
  2. analysis:E(k) =\frac{3^{k-1}}{2^k - 2}



これが完全に一致したときは本当に感動した。